円高の謎!?
2011年6月15日
ファイナンシャル・プランナー ゆりもとひろみ
2011年3月、東日本大震災が起きました。
さらに津波による原発問題が浮上し、2011年6月現在も、不安が完全解消されない状態です。
これだけの被害、さらに地震だけでなく、被害がどこまで拡大するか読めない原発問題が続いていれば、
普通、その国の通貨は、値段が下がるはずです(=円安になるということです)。
ところが、実際の為替相場は、全く逆の現象が起きました。
震災直後には、ここ10年来の最高値をつけ、一時期1ドル=70円台に突入しました。
一体何が起こっているのでしょう?
あまりきちんと説明されていない、円高の理由を、一緒に整理して行きたいと思います
(できるだけ、専門用語を使わずにがんばります!)
なぜ、円高になるのか?
円高のナゾをとく鍵は、ひとつは日本にあり、もうひとつはアメリカにあります。
日本は国の借金がどんどん増えていて、いつ破綻してもおかしくない。
日本国債は格付けをどんどん下げられているので、日本は世界から信頼されていない。
日本は近い将来、ギリシャみたいに破綻の危機に陥る――。
連日ニュースで報道されているのは、上記のような内容です。
非常に説得力があって、その通り! と思っている方も多いことでしょう。
ところが、上記の理屈には、本質的に間違っているところがいくつかあります。
まず、「信頼されていない」国の通貨が、どんどん高くなる(値打ちが上がる)ということはありえません。
中東で紛争があったり、何か世界的な事件があると、円が買われ、円高が進むという現象が続いています。
「有事の円」という現象が起きています。
少し前までは、「有事のドル」でしたよね。
ということは、どういうことか?
実は、世界中の人が、大きな声では言ってくれませんが、「ドルより円の方が信頼できる」と考えているのです。
アメリカは、経済を回復させることに必死で、どんどんドル紙幣を刷って、ドル安を目指しています。
ドル安になるほうが輸出で利益がたくさんでるため、国内の企業が元気になると考えているためです
(日本が円安になったほうが輸出企業の利益が出やすいのと同じ理屈です)。
しかし、アメリカの景気回復はまだ充分ではなく、一方国の借金は、日本など目ではないペースで拡大しています。
ドルの値打ちはどこまで下がるのかと、心配されています。
ですから、何か事件があったときに、価値の減りにくい資産として、円を買うようになってきたのです。
もうひとつ、「ギリシャみたいになる」というのも、正確ではありません。
ギリシャが破綻寸前まで行っている理由は、「外国からの借金」を、膨大にしていたためです。
今までに破綻した、アルゼンチンやロシアも同じです。
外国から借金をしすぎた国が、信用を無くすと、一般的にはどうなるか?
◆ 外国人はお金が返ってこないかもと心配して、国債を売りまくるため、 国債が暴落したり、買ってもらえなくなる
◆ 信用が落ちるから、その分もっと高い金利を払わないと、 借金ができなくなる
⇒ その結果、国の運転資金がなくなって、首が回らなくなる
こういったことが負の連鎖で起きて、破綻にいたってしまいます。
ところが、日本は100%円建て国債しか発行しておらず、しかももっと格付けのよい先進国より、低い金利です。
そのうち95%は国内で購入されています。
長年積み上げた貯蓄が大量にある国が、すぐにギリシャみたいになる、というのは、まず考えにくいのです。
結論をまとめますと、以下の2点となります。
1.日本の財政状況は決してよいとはいえないが、他の国はもっとひどいので、相対的に円の信用は高い
2.日本国債の保有者はほとんど日本人だから、急に売られすぎて暴落することは、まず起き難い
最近の資産運用相談では、
「円でおいて置くと、日本が破綻したときに心配だから、外貨投資をしたい」
というお話を良く伺います。
私たちの事務所では、資産のリスク分散対策として、通貨や商品カテゴリー分散投資の相談対応をしております。
ただ、恐怖心からやみくもに、資産を海外投資にシフトするのは、お勧めできません。
上記のようなお話をさせて頂き、落ち着いて、円高・円安 どちらが進んでも、
対応できるポートフォリオを目指しましょう、とご案内しています。
為替相場の行方を考える、参考になれば幸いです。
2011年6月13日 ゆりもとFP事務所メルマガ掲載コラム 再編集