一番明確な支出・教育費
2010年10月19日
ファイナンシャル・プランナー ゆりもとひろみ
子どもの教育について情報収集をしていますか?
多くのご家庭では、お子さんが大学進学を望めば、行かせてあげることをお考えだと思います。また、教育環境や将来のことを考えて、「高校から私立」「中学から私立」「小学校から私立」を検討しているご家庭もおありかと存じます。
私立か公立か迷う場合は、高いほうで見積もって、準備するのが賢明ですね。特に親世代の学習事情とはかなり変わっているので、「無理に塾や私立に行かせなくたって大丈夫じゃないか」と、情報収集をしないでいると、あとで大変あせることにもなります。
私学進学は、より良い教育環境を求めて希望する場合もありますが、最近では、公立で最低限望む学習環境が満たされないため、私立を選ばざるを得ない地域も、増えているようです。
例えば、東京のある街に、地方からご主人の栄転で引っ越してこられた奥様が、大変困惑していると、話を伺ったことがあります。子どもが転入した小学校のクラスが、いわゆる学級崩壊だったのです。
「机ごと教室を徘徊して騒ぐ児童がいて、授業が成り立っていない、この先どうすればいいんでしょう。中学受験なんて、よその世界の話と思っていただけれど、これでは考えざるを得ないです」というお話でした。
イザという時のためにも資金準備を
一部の公立学校では、いじめ問題も深刻です。
2006年、文部科学省が「7年連続いじめ自殺は0件です」と発表した頃から、「このようないじめを受け続けました」という遺書を遺して自殺する子どもが急増し、現在でも、大変な社会問題になっています。
要するに、深刻ないじめがあっても、学校によっては、被害者を助けるのではなく、ひどい場合は学校ぐるみで事実を隠してしまうので、被害を受けた子どもが、不登校や転校・自殺にいたるケースが、全国で相当な件数に上るであろうことが分かってきたのです。
「いじめ自殺は0件」という文部科学省の発表は、残念ながら、「現場の情報は省まで全然上がってきていません」と、発表したようなものですね。
入学予定の学校の状態や、子どもの性格などをよく考慮してあげないと、子どもの人生が狂ったり、命を落としかねない悩みに遭遇することも、他人ごとではないかもしれない時代です。
もちろん、良い公立学校や、素晴らしい先生もたくさんおられますので、心配ないケースも多いでしょう。また、親である私たちが、地域や学校をよりよくするために、できるだけの協力をすることも欠かせないでしょう。
皆さんの町が、「安いから公立におまかせ」といえる町かどうか。お子さんが生まれたら少しでも情報収集をし、場合によっては私学進学や引越しを視野に入れておく必要があるかもしれません。その時に臨機応変な進路変更をするためにも、必要なのは資金準備ですね。
それでは、第37のワザ をお送りします。
国公立200万円 / 私立300万円
お子さんが生まれた瞬間、大学進学のため、18年後の1〜3月に、教育費のピークが来ることは確定しますね。受験費用も含めると、大学進学初年度に、国公立で200万円、私立なら300万円の資金を準備しておきたいと言われています。これほど、目的・金額・時期が明確で動かせないライフイベントは、他にはあまりありません。
住宅購入や車・旅行・そして老後資金も、事情によって時期をずらしたり、予算を変更することは可能です。一方教育費は、一浪してズレても1年程度です(でも、浪人を見込んだ資金計画はしませんよね。そうすると準備期間は、やはり確定していますね)。
金額も、大学4年間(授業料+その他もろもろ)で、国公立なら300〜400万円、私立なら500〜600万円くらいと言われています。教育費インフレを考えると、必要金額が増えることはあっても、減ることはあまりなさそうです。
積立にする? 一時金にする?
実質の準備期間を17年間と考えますと、お子様が生まれてから、毎月1万円を積み立てていくと、17年で約200万円、毎月1.5万円ずつ積み立てていくと、17年で約300万円となります(運用を考えない場合)。
積み立てが向いていないという方は、一時金で固めていく、というやり方もOKですよ。50万、100万とまとまったお金を早めに作って、将来の学資用として、金融商品で固めていく方法です。最低限200〜300万円の準備ができていれば、大学進学時に、資金繰りで四苦八苦することは防げます。
そして、大学用の資金のメドがついていれば、高校や中学受験も現実可能性として検討することができます。先を見ないで、中学から私立に入れ、後で大変な思いをしている家庭から、少なからず相談を受けています。なのでまず、大学用資金を押さえることをお勧めしたいと思います。
インフレリスクも考慮にいれて
大体10年以上の期間があれば、教育資金の準備の選択肢も広がります。
現在、学資保険の利回りはかなり低く、元本割れしたり、教育費インフレをカバーできないことが多いです。ですので、積み立てたお金の価値を減らさない為にも、皆さんの知識・運用経験に応じて、
・個人向け国債
・投資信託
・インフレ対応機能のある保険
・外貨建て商品
・教育関連業種の株式
などで、資金の1部をインフレ対応させておくことも可能です。お子さんが生まれたばかりや、未就学のご家庭は、今から教育資金計画を立てて準備すれば、充分間に合うと思います。
ただ、実際のところ、今、このコラムをお読みの皆さんのなかで、17年の資金準備期間がある人は、少ないのではないかと思います。多くのご家庭では、お子様の大学進学まで、「あと10年後」「あと5年後」「あと1ヵ月後!」などということで、期間に応じた危機感の中にあると思います。こういう場合は、住宅ローンや保険・資産の整理、家計支出の見直し、などを含めた資金捻出や、借入れの検討が必要になってきます。
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