医療保険・ガン保険について教えて!
2011.10.13
Q.50代以降になると、夫や自分の病気が心配です。医療保険やガン保険には入ったほうがいいのしょうか? 入院すると どれくらいお金がかかるものなのでしょうか? 相談者 Nさん(50歳・主婦)/夫(53歳・会社員)
A.入院時の貯蓄の取りくずしに備えたい場合は、加入を検討しましょう。
1.どんな病気になりやすい?
日本人は、約6割の方が3大生活習慣病(ガン・心疾患・脳血管疾患)で亡くなっています。 50代、60代の死因はガンが半分近くを占めています。
2.平均何日入院している?
すべての病気の平均入院日数は全年齢で35.6日、65歳以上の平均でも47.7日となっています。 意外と短いですね。ただし脳血管疾患は入院日数が長くなっています。 また、ガンは入退院を繰り返すことが多いので、入院日数の合計は長い可能性があります。
保険選びのポイント<1> 1入院何日保障してくれる保険がよいか?
● 家系的にガンや脳血管疾患が心配な人
120日保障の保険がよい
● 脳血管疾患は心配ないと思う人
60日あれば充分かも
● 脳血管疾患を含む生活習慣病だけ長い日数保障してほしい
普通の病気やケガは60日、生活習慣病は120日など長い日数を保障する保険がよい
3.入院日額はいくら必要?
生命保険文化センター「生活保障に関する調査」によると、
平成22年度の入院一日あたりの平均自己負担額は、16,004円 となっています。
※ 高額療養費を利用した後の金額です。
「自己負担額」というのは、病院に支払う医療費だけでなく、家族の交通費や食事代など、入院に伴う支出の総額を指します。
医療費の自己負担分は健康保険制度から7割給付されるため3割負担で済みますし、さらに高額療養費が適用されると
1カ月にかかる医療費は8万〜10万円程度で済みます。
ただし、全額自己負担の差額のベッド代、食事代や医療費以外の出費を合計すると表のような結果となっています。
保険選びのポイント<2> 入院日額はいくら必要?
医療保険はたいてい日額の5〜20倍の手術給付金が保障されていますので、上記のすべてを入院日額で準備しなくてもよさそうです (すべて準備すると保険料が跳ね上がってしまいます)。 また、医療保険は入院しないとモトが取れない保険ですので、いざという時は貯蓄の取りくずしも覚悟しながら、最低限の保障にしておきましょう。
● 医療保険では最低限カバーできればよい、と思う人
日額5,000円
● 入院時の貯蓄の取りくずしはできるだけ少なくしたい人
日額10,000円以上
● 上記のどちらでもない人
日額7,000円など(5,000円〜1,000円刻みで設定できます)。
● 特定の病気だけ保障を厚くしたい人
ガン特約・3大疾病特約・女性疾病特約などでカバー
「健康保険」は最強の医療保険!
たとえば入院・手術・投薬で、1カ月に100万円の医療費がかかった場合、健康保険は3割負担ですので、 患者の負担は30万円で済みます。さらに高額療養費が適用されると、一般的な所得の人の場合で、実際の自己負担額は 80,100円+(1,000,000円−267,000円)×1%=87,430円で済みます(保険適用外の食事や差額ベッド代は実費です)。
< 高額療養費計算式 >
低所得者(市町村民税非課税者) | 35,400円 |
---|---|
一 般 | 80,100+(医療費−267,000円)×1% |
高所得者(標準報酬月額53万円以上) | 150,000円+(医療費−500,000円)×1% |
4.保障と保険料のチェックポイントは?
昔の医療保険(入院保障)は、入院5日以上や8日以上で保険金が出るタイプが多かったのですが、 最近は1泊や日帰り入院から保険金を受け取れるタイプが人気です。 また、長生きリスクに備えて、一生涯保障を得られるタイプの医療保険を選ぶ方が増えています。
《保険料の金額と支払い方はどうする?》
金額と支払い方の希望 | あてはまる保険 | 保障期間 | 保険料 |
---|---|---|---|
当面の保障をできるだけ 安く用意したい |
定期医療保険 共済など |
10年など 共済は65歳まで |
更新のたびにアップ 共済は65歳以降の保障が大幅ダウン |
一生涯の保障をできるだけ安く用意したい | 終身タイプの 医療保障 |
一生涯 | 金額は変わらず支払いは一生 |
一生涯の保障を60歳など(有期)で支払いを終えたい | 終身タイプの 医療保障 |
一生涯 | 金額は変わらず支払いは60歳など(有期)で終了 |
保険選びのポイント<3> 保障と保険料の主なチェックポイント
● 入院何日目〜何日目まで保障されるか
● 保障は何歳までか、延長できるか
● 保険料は今後アップするのかしないのか、いつまで支払いが続くのか
5.ガン保険は必要?
ガンは日本人の死因の第1位ですが、最近は治療による生存率も上がってきており、治せる病気になりつつあります。 ただし、治療には、普通の家庭の貯蓄ではまかなえないような多額の費用がかかるケースがあります。 また、先進医療を使うと、通常の医療より体への負担を小さくできるなどのメリットがありますが、 健康保険が適用されないため、治療費全額が自己負担となります。
《ガン治療の先進医療例》
先進医療技術名 | 平均自己負担費用 | 平均入院期間 | 年間実施人数 |
---|---|---|---|
抗悪性腫瘍剤感受性検査(HDRA法又はCD-DST法) | 74,238円 | 23.6日 | 362人 |
陽子線治療 | 2,775,960円 | 18.0日 | 1,225人 |
重粒子線治療 | 2,979,990円 | 24.0日 | 729人 |
活性化自己リンパ球移入療法 | 550,765円 | 16.8日 | 57人 |
経皮的骨形成術 有痛性悪性骨腫瘍 | 164,404円 | 7.4日 | 831人 |
経皮的肺がんラジオ波焼灼療法 | 192,845円 | 15.9日 | 211人 |
前立腺がん(全摘) 内視鏡下手術用ロボット支援 | 669,187円 | 17.5日 | 157人 |
厚生労働省 中央保険医療協議会「平成22年度6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」より
医療保険とガン保険の違いは・・・
医療保険(ガンも含む) > ガン保険(ガンだけに適用)
上記のような関係ですが、ガン保険だけの特典もあります。
ガン保険の特徴
ガン保険はガンになった場合のみ保障し、 医療保険はガンを含むどんな病気・ケガでも、入院や所定の手術を保障します。 ガン保険は、保険会社によって保障が大きく異なりますが、以下のような保障がある場合が多く、 ガン治療の費用負担をサポートしてくれます。
保障例 1) | ガンと診断されると一時金がもらえる |
---|---|
保障例 2) | ガン入院の場合は、日数無制限で保険金を受け取れる |
保障例 3) | 先進医療の実費相当を保険金として受け取れる |
注:上記の保障がないガン保険もあります。加入時には希望する保障があるかどうか、ご確認ください。
保険選びのポイント<4> ガン保険は必要か?
● ガンで亡くなる日本人は、全体の約3分の1です。 ガンになった親族が多い場合や、喫煙などの生活習慣からガンになる可能性が高いと思う方で、ガンになった場合、高額の医療費負担ができない方は、 ガン保険でカバーしておくとよいかもしれません。
◆◇◆ 用語解説 ◆◇◆◇◆
医療保険の1入院 同じ病気で180日以内で入退院を繰り返した場合は、1入院と見なされます。
先進医療 厚生労働省が認定した最新の医療行為で、認定された病院で実施されています。
平成23年8月1日現在で、92種類の先進医療が認定されています。利用する場合は、全額自己負担となります。
医療保険・ガン保険の考え方
民間の医療保険を検討する前に、確認していただきたいことは、皆さんはすでに最強の医療保険ともいえる
「健康保険」(自営業の方は国民健康保険など)に加入しているということです。
健康保険制度は、自分だけでなく家族も含めて通院・入院の医療費を7割引にしてくれます。
また、病気やケガで長期間働けなくなった場合に、お給料の6割を最高1年半給付してくれる「傷病手当金」や、子どもが生まれると42万円が支給される
「出産育児一時金」など、民間の医療保険では不可能な手厚い保障がたくさんついています。
この健康保険に加えて、さらに民間の医療保険を準備すべきかどうかを考えてみましょう。
医療保険は入院しないと「払い損」
医療保険・ガン保険は、入院時の経済リスクに備える金融商品です。
記事で見てきたように、家族が長期入院すると、かなりの出費を覚悟しなくてはいけません。
その支出を貯蓄から取りくずしても大丈夫という家庭は、医療保険は必要ないかもしれません。
一方、入院に伴う支出や収入のダウンを、貯蓄の取りくずしだけではまかなえない方や、できるだけ貯蓄を取りくずしたくない方は、
医療保険での備えを検討されるとよいでしょう。
また、保険料として天引きされないと、入院などの臨時支出用の貯蓄を貯められないタイプの方も、加入しておいたほうがよいかもしれません。
ただし、医療保険というのは、入院をほとんどしなければ払い損となる保険ですので、保険料がもったいなくない程度にしておくとよいですね。
ガン保険は高額治療費への備え
一方、ガンになった場合は、平均で100万円程度、人によっては相当高額の治療費が発生する ことを考えると、ガン保険に関しては医療保険と別の観点で検討する必要がありそうです。
日本人の3人に1人がガンで死亡しているとのことです。ガンで亡くなった親族が多い方や喫煙などガンになりやすい生活習慣をお持ちの方は、 ガンへの保障を準備しておいたほうが安心だといえます。 あくまで統計データは平均値ですので、自分の遺伝的体質や生活習慣を考慮に入れて、医療保険・ガン保険を準備すべきか整理していただければと思います。
保険は使わないで済むほうが幸せな金融商品ですので、必要最低限の保障を準備しつつ、保険のお世話にならずに済むように健康管理を心がけたいものですね。
雑誌『アー・ユー・ハッピー?』 2008年11月号掲載分 2011.10.13再編集