【レポート】 二宮尊徳に学ぶ「よい借金・わるい借金」その2
2011年9月08日
ファイナンシャル・プランナー ゆりもとひろみ
前回は、200年も前の日本で、二宮尊徳(にのみやそんとく)という方が、
経済的に豊かになるだけでなく、人間性の向上ももたらす借金返済の仕組みを発明した
というお話をしました。
今回は、二宮尊徳が考えた、驚きの金融システムを検証したいと思います。
その前に、当時の時代背景を知っておいてください。
尊徳の生きた時代
当時、お金に困った庶民は、べらぼうな利息を取る高利貸しから、
お金を借りるしか方法がありませんでした。
あまりの金利の高さに、一度借りると地獄の返済から抜け出せず、
生活はますます困窮し、希望が持てずにすさみきってしまう、
という人たちがたくさんいたのです。
尊徳は、こういう窮状から庶民を救うため、
助け合いながら努力をして、悪い借金から逃れ、
生活を向上させていく方法を考え抜いて、
素晴らしい金融システムと金融哲学を生み出しました。
システムを簡単に、現代的に説明すると、以下のようになります。
人びとの暮らしと心を向上させた金融システムとは?
◎ どうしてもお金が必要な人に、例えば100万円を基金から貸し付ける
(最初の基金の元手は、尊徳が私財を提供して作りました)。
◎ 借りた人は、感謝の気持ちで毎年20万円返済する。
◎ 5年返済を続けると、元本の100万円を返せる。
◎ 5年間20万円を返せたのであれば、もう1年支払っても生活は成り立つはずであるので、
6年目にあと20万円基金に支払う。
◎ 6年目の20万円が現在の「利息」に当たるお金ですが、尊徳は「冥加金(みょうがきん)」と呼びました。
自分を信頼してお金を貸してくれたことに対する感謝を形にして差し出す行為であると定義づけたのです。
◎ 返済された元本と冥加金は基金に組み込まれ、次の貸し出しに回った。
◎ また連帯保証人の仕組みを併用し、仲間に対する信頼を、返済をまっとうするための動機付けに使った。
この貸し金システムは、仕組みだけでうまく回ったわけではなく、 尊徳オリジナルの金融哲学を屋台骨に持っていたために 大成功しました。
人類史上、最高の精神性を有しているといっても 言い過ぎではない尊徳の金融哲学を、 「二宮尊徳の五常講(ごじょうこう)」 といいます。
次回「よい借金・わるい借金 その3」では、信頼に基づいてお金を回す原動力となった、 「五常講」とはどのようなものか、みていきたいと思います。
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