お金持ちになること幸せになることは両立できるの?
2010年10月16日
ファイナンシャル・プランナー ゆりもとひろみ
お金は、どれくらいあったらいいの?
もっと収入があったら、子供を全員、私学に行かせられるのに・・・
もっと貯金があったら、あの一戸建て購入に手が届くのに・・・
今の貯蓄ペースだと、老後は安心して暮らせないのではないかしら・・・
皆様の家計の悩みの大半は、このように、経済力の不足により、人生の自由度が狭められていることへの不満ではないでしょうか。
では、一体どれくらいのお金があれば、人生イベントの希望が全て叶うか、金額で答えることはできるでしょうか。
また、大金持ちといわれるくらいの有り余る資産があれば、すべての悩みは解決するのでしょうか。
アメリカでは「セミリタイヤ」というのが一時期流行りました。さっさと一生遊んで暮らせるだけの資産を作り、仕事を引退し、海辺に豪邸を建て、ヨットを買って、悠々自適に暮らすことが、アメリカンドリームと同一視される時期がありました。その頃は、年老いても働き続ける人が多い日本人を奴隷のようだなどと、低く見る論調がありました。
ところが、セミリタイヤは、必ずしも理想的な人生といえないことが分かってきました。やることがなくなった富豪たちはわりと早死にしてしまうらしいのです。
日本で増えてきているデイトレーダー(株の短期売買で生計を立てている人)たちにも同じような悩みがあるそうです。お金には全く不自由しなくなったけれど、人との関わりがない寂しさ、他の人の努力の上澄みだけをもらって利益を上げ、社会に何も貢献していないようなむなしさ感じるという方が少なくないそうです。
こういう事例から何を感じ取れますでしょうか。
ここで、お金の自由度にどういう段階があるのか、確認したいと思います。
お金の自由度の段階
まず、第1段階は、毎月の収入で生活が成り立つ状態ですね。
これができなくて毎月赤字が続く、借りてこないと生活ができないという状態は非常に不幸です。少なくとも今という時点で、基本的に黒字の経済になっていることが、ベースの経済的自由の段階といえます。
第2段階は、人生のトータルで経済的に黒字の状態が実現できることです。
住宅費や教育費、老後資金、レジャー費といった、人生で叶えたい基本のイベントがほぼ実現できるだけの収入があり、計画的な蓄財が実現している状態です。ここまでいければ、かなり精神的には安心して生活することができます。
そして第3段階、究極の段階といってもいいですが、資産または資産の運用益で、半永久的に生活ができる状態を実現することです。
ここまで行くと、生活のために働く必要はなくなり、人生の持ち時間をほぼ丸々、自由に使うことができるようになります。以前流行った『金持ち父さん』の著者は、この状態が本当のお金持ちであると力説しています。具体的な金額の目安としては、年間生活費が1000万円必要で、手持ちの資産を年利10%で運用できるスキルがある方なら、運用できる資産が1億円あればよいということになります。
お金が有り余る状態を実現できることはよいことです。労働収入がなくても生活できるだけの資産を創ることができれば、本当に素晴らしいことです。ただ、それ以上に大切な、あるものを持っていれば、お金に振り回されることなく、資産を使いこなして、より大きな幸福を実現することができるのです。
それでは、第30のワザ をお送りします。
あなたにとってのミッションは?
自分の生活のために働く必要がなくなったときでも、あなただけが生み出せる幸福や社会貢献をミッション(聖なる使命)と呼んでみたいと思います。
家事や育児は大変だわ、と思うこともあるでしょうが、もし、お金の心配が全くなく、いつでも人を雇って代わってもらえるとすれば、何を人にお任せしますか?
お掃除やベビーシッターはお願いしたいかも知れませんが、家族のための食事作りはどうでしょうか?
やはり自分でやるだろうなという方も少なくないのではないでしょうか。
病気になって不安そうにしがみついてくる子供の通院を任せますか?
もし経済的に自由なら、なおさら他の事は置いても、側にいてあげたいと思うのではないでしょうか。そうイメージすると、主婦業・子育て・介護というのは、女性にとってのミッションであることがとても多いですよね。
また、お仕事をもたれている方も多いでしょう。その仕事は、お金に困らないために続けているお仕事でしょうか? それとも、働く必要が完全になくなっても、続けているお仕事でしょうか?
・・・ゆりもとはたとえ収入を得る必要がなくなっても、FP業務を続けたいと思っています。自分を成長させながら、多くの方のお金の悩みを解決するこの仕事をとても誇りに感じています。この仕事は私とってのミッション(天職)です。
いろいろ苦労もありましたが、仕事を通じて、多くの新しいことを知ることができ、多くの新しい方々との出会いがあり、その方々のお役に立て、喜んでいただける。この職業に巡り会えたことを、とても幸福に思っています。
今携わっているお仕事に、収入以上の目的を見つけられている方は、幸福だと思います。たとえ今は、家計のために自分の望みとは異なるお仕事をされていても――私もそういう時期が何年かありました――、そこで学べること、貢献できることにはベストを尽くし、希望を心に描いて準備すれば、必ず実現していくことと思います。
収入の為以上の目的意識を持って、携わっている役割がある方、また将来そういう役割を担いたいと思える方は、お金持ちになることによる落とし穴には落ちずに済み、さらに人生を発展させてゆくことができるでしょう。
さらにもうひとつ、視点を変えて、経済の自由度を考えてみたいと思います。
自分の時間を自由に使えること
お金の自由度の第3段階――資産または資産の運用益で、半永久的に生活ができる状態――というのは、夫婦そろって収入を目的とした労働から自由になる状態で、これはかなり用意周到な計画と才覚、ある程度の歳月を必要とします。
けれど、ご主人様の収入プラス資産運用だけで、第2段階――人生のトータルで経済的に黒字の状態――を実現するのというのは、可能性は高いですね。そうなると、奥様はまさしく、自分の時間をほぼ完全に自由に使えるという究極の自由を享受できるのです。
そう考えると、専業主婦というのは、つまらないものでも、働く女性より卑しいものでもなく、昔の王侯貴族に負けないくらい、自由と可能性を手にしている恵まれた立場といえます。
そんなことを踏まえながら、皆さんのご家庭で目指す経済の自由度と、その自由を使いこなして目指したい人生の幸福について、目的地をイメージしていただく参考になれば、嬉しく思います。
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