年収103万円のカベを超えると損?
2007.08.27 / 2010.10.04 内容一部更新
Q.パートをしていますが「年収103万円の壁」を超えて働くと損なのでしょうか?
現在パートで働いていて「夫の扶養の範囲内」ということで年収を103万円以下に抑えています。子どもが大きくなればもっと働きたいと思うのですが、扶養をはずれると、どのくらい損なんですか? それを突破するための年収はいくらくらいなのでしょうか?
(Dさん 主婦39歳)
A.お答えします。
1.「103万円の壁」と「130万円の壁」がある
Dさん(以下――) 私に限らず、主婦として働く際に「年収103万円のカベ」があって、その範囲内で仕事をするケースが多いみたいですけど……。
ゆりもと(以下「ゆ」) 夫の扶養に入っている主婦の皆さんには、収入を増やしていく途中で、いわゆる「年収103万円のカベ」と「130万円のカベ」という、手取り収入が逆転する収入段階があるんです。
収入−給与所得控除65万円−基礎控除38万=課税所得金額
※収入が給与でない場合(内職や株式・外為投資、保険の満期金など)は、 38万円を超えると課税されることがあります。
2.「103万円」を超えると、夫の配偶者手当がなくなる
――まず「103万円のカベ」って?
ゆ 年収103万円を超えると、夫が配偶者控除を受けられなくなり、妻に所得税がかかり始めるということですが、所得税・住民税の金額はこの段階ではそれほど高額ではありません。
(年収104万円で所得税・住民税合わせて1万円程度です。ただし、妻の年収が103−141万円までは、夫は配偶者特別控除が受けられますが、妻の収入が増えるにつれ控除額が減っていきます)。
実はそれよりも問題なのが、夫が会社員で、会社から配偶者手当を受けている場合です。妻の年収が103万円を超えると配偶者手当を返還しなくてはならないケースが多いんです。これが「扶養を超えたら損になる」と考えられている大きな理由だと思います。
――配偶者手当がもらえなくなるのが大きいんですね。
ゆ たとえば月1万5000円の配偶者手当てが支給されている場合、妻の年収が103万円を少しでも超えたら、1年分の手当て18万円がなくなってしまうのですから、かなり痛いですね(手当ての金額は会社によって違います)。毎年12月になると、年収103万円以下に調整するために勤務を減らす主婦が多いのは、このためです。パート主婦を主戦力とする職場の上司は、扶養を超えないようにシフト調整をしてあげることが大事な業務になっているようです。
――そうですか。104万円になったとたんに、マイナス18万円だと、一気に86万円になってしまいますね。
3.「130万円」を超えると、社会保険料がかかる
――では、「130万円のカベ」は?
ゆ 妻の収入だけを考えると、103万円を超えると税金は少々払いますが、手取り収入は増え続けます。次の大きなカベが130万円です。これを超えると、社会保険料の負担が生じます(※夫が自営業の場合は、国民健康保険・国民年金の扱いになるので影響はありません)。
社会保険料は、年収144万円(月収12万円)で、月額1万4000円程度になります。ですから社保・税引き後の手取り年収は約120万円となってしまいます(勤務先や住んでいる場所・年齢で若干異なります)。
――そうですか。130万円を超えると、かえって手取りが減ってしまうのですね。
【2010.10.04 補足】
● 住民税に関しては、お住まいの地域により限度額が異なる場合があります。詳しくは、FPコラム:住民税の非課税枠は? をご参照ください。
● 社会保険の上限に関しても、収入要件の他にも条件があります。こちらも詳しくは、FPコラム:扶養を外れる場合の落とし穴 をご参照ください
4.「160万円」を超えれば、あとは増えるだけ!
ゆ ただし、年収が約160万円を超えてしまえば、税金や社会保険を負担しても再び手取り収入が増えていきます。ですので、手取りの確保を考えると、130万円以下の年収に抑えるか、160万円以上を目ざすかという選択になりますね。
――なるほど。年収160万円以上になれば、あとは手取りは増えていくだけなんですね。私としては、もう少し仕事を増やして、年収160万円以上を目ざせたらいいなと思います。
「夫が会社員で、子どもがある程度大きくなったら、妻がパートに出て家計を助ける」というパターンが、日本では長らく典型的な就業形態となってきました。しかし、最近では、会社員でも収入の格差は開く一方で、妻がパートに出たくらいでは生活費がまかなえないという世帯も増え始めています。
もともとは、主婦や収入が少ない家族を優遇するために「扶養家族」の仕組みが作られているのですが、その副作用として「103万円の壁」「130万円の壁」という手取り年収が逆転する段階ができたため、主婦がストレートに収入増を目ざしにくいという現象が生まれています。
これが「扶養の範囲で働かないと損をする」と多くの主婦が思っている「呪縛」のようなものでしょう。その背景として、会社側にも「パートで安く雇ったほうが得だ」という意識があるのは否定できないと思います。
けれども、10年以上働くのでしたら、扶養を超えないような働き方をすることに神経を使い続けるよりも、ゆくゆくは「カベ」を超えて、大きく稼いでいこうと努力するほうが、10年間の手取りも増えますし、身につくスキルも増えて、結果的に実りが大きいのではないでしょうか。
ですから、「まずパートありき」ではなくて、10年以上働く予定でしたら、どれくらいの収入を得れば家計が回っていくのかを考えて、おおまかでよいので将来設計を立ててみるとよいでしょう。
「将来的に教育費や老後資金の準備がいくら必要か」「夫の収入でまかなえないのはどれくらいか」「それは妻のパート収入で十分間に合うのか、それとももっと収入が必要なのか」を計算してみましょう。
そして「希望の収入を得られる仕事につくには、どのようなスキルや資格が必要か」「何歳までに再就職活動を行えば勝算があるのか」「家事や育児の分担に関して家族の協力が得られるか」など、計画的な準備をしておくとよいでしょう。
パートの範囲の収入では家計が厳しい家庭や、短期間で高収入を得て早く仕事をやめたいという方は、「収入逆転のカベ」を突き抜けて働くことも考えてみてはいかがでしょうか。
ゆりもとひろみ
雑誌『アー・ユー・ハッピー?』2007年5月号掲載分 2007.08.27 再編集
2010.10.04 内容一部更新
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